人は、何かを買うために生きているわけではない。よい人と出会い、よい人生を送るために生きている。そこに、消費者があえて口にしない、真の欲求がある。

ビジネスお役立ち知識

“ノルマ”と“顧客満足”のバランスが利益を生む!

昨年、資生堂はビューティーコンサルタント(以下BC。美容部員のこと)の売り上げノルマを廃止しました。「資生堂は100%顧客志向の会社に生まれ変わる」とする前田新造社長の改革の一つです。ノルマを廃止するとは売り上げが落ち込むリスクを含んでのこと。前田社長の決断は各方面に衝撃を与えたことでしょう。

英断の背景には、「業界で生き残っていくために必要なのは“資生堂”というブランドの確立」という考え方があるようです。ノルマを課せば押し売り販売になることもあります。それで業績が上がっても資生堂の名に傷がつき、押し売りを不快に思った顧客は二度と戻ってこないでしょう。「ノルマによって大事なお客様を失っていた」と考えた前田社長は、ノルマの廃止で一時的に売り上げが下がったとしても、長い目で見た信頼関係の勝ち取りを狙っているのです。

実際、現場のBCたちもノルマによる弊害を嘆いていたようです。資生堂のBCは“カウンセリング販売”、つまり顧客の悩みに耳を傾け、的確なアドバイスの元に商品を販売する方式を前提としながらも、実際はノルマを達成することも仕事の一つです。ノルマと顧客満足の狭間で戸惑ってきたBCは「本来の仕事にまい進できる」とノルマ撤廃に大賛成だったそうです。

一方、社内では反対派も多く、特にBCを管理する営業部は大反対だったとか。BCを評価する際、今まではノルマという数値が判断材料になっていましたが、顧客満足を数値化するのは難しく、従来のやり方が通用しないからです。新たな基準を設けるスイッチングコストも問題になっていたそうです。

資生堂では現在、BCの評価方法の一つとして顧客からのはがきアンケートを行っています。「要望を聞いたか」「また接客を受けたいか」などを4段階で評価してもらうアンケートはがきをBCが手渡し、顧客に評価してもらうのです。半年で約22万通が返送されてきたといいます。

BCや消費者からすれば前田社長の理念は歓迎すべきものですが、企業戦略としては大きな賭けでしょう。100%顧客志向に挑む資生堂の今後に注目していきたいところです。

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