ビジネスお役立ち知識
デザインの輪郭 / 深澤直人 (著)
《デザイン携帯》の先駆けとなったauの「INFOBAR」を覚えているでしょうか。または無印良品の換気扇型CDプレーヤーや家電雑貨ブランド「±0(プラスマイナスゼロ)」のまあるい加湿器……。本書は、これらのヒット商品を生み出した工業デザイナー深澤直人氏の書き下ろしエッセーです。
深澤氏のデザインはスタイリッシュで美しく、画期的です。しかし、目指しているところは《いいふつう》だそうです。
「デザインは特別なものを、センスのいいものを、きらびやかなものを作るための手法や技術ではない。相手がなにを求めているかを知り、相手の求めているものを見つけ、相手の求めているものを作ることにより、自分と相手双方が幸せになるための道である」
これはモノ作りに携わる多くの人に共通する感覚ではないでしょうか。西澤氏のデザインの根本あるのは「震えるように感動してきた体験」であり、「デザインとは日常生活の価値を見直す《気づき》」だそうです。だから、「変えてしまうのではなく、《いいふつう》にすることで生活レベルが上がる」と言います。
散文のような語り口を追いながらアールが美しい作品の写真を見ていると、知らない土地を訪れているような気分になってきます。デザインは単なる外側の《包装》ではなく、かといって特別な付加価値として大げさにありがたがるものでもなく、《いいふつう》は人の五感を刺激して日常生活で曇りがちな目を開かせてくれるのでしょう。「大切なものは、いつも、あたりまえのところにある」の言葉に、そんな当たり前なことも忘れがちな自分に気づきます。