ビジネスお役立ち知識
「知識」を「知恵」に変えて大きな成果を出す方法。
脳ブーム以降、一般の人の間でも「メタ認知」という言葉が使われだしました。メタ認知とは自分自身を別次元から眺めて認識する能力で、メタ認知能力が発達している人は「知識」を「知恵」に昇華して実践に役立てることに長けているようです。つまり、一つひとつの経験を必要に応じて結びつけ、新たな発想や行動を生み出していく力とも言えるでしょう。ビジネスにおいてもメタ認知の育成に注目が集まっているのもうなずけます。
■ フライを落とした野手はなぜ空を見上げるのか? 保科充弘(著)
さて本書は、高次のメタ認知能力の持ち主が「日本一わかりやすい」ことに挑戦したM&Aと企業防衛の本です。この分野は法律用語や横文字が氾濫し、類書のほとんどは睡眠導入剤にはなっても実践で役立てにくいものばかり。ところが、M&Aアドバイザーであり同時に野球人でもある著者の保科氏は、「野球」と「経営」と結びつけることでエピソード型の経営指南書に仕立てたのです。
脳話の続きで言うと、単なるモノの名前や事実といった「意味記憶」より、個人的な経験や出来事の「エピソード記憶」のほうがはるかに記憶の定着率が良く、身になじみます。難しい内容を野球という身近なスポーツに絡ませ、しかもエピソードを交えて解説した点が本書の優れた着眼点であり、読者のメタ認知も刺激するわけです。
「M&Aと企業防衛」と銘打っていますが、ベースにあるのは健全で安定した経営を末永く続けていくための実践的なアドバイスです。「フライを落とした野手」とは誰の例えなのか。空を見上げる本当の理由な何なのか――。読者がそれに気づいたとき、今までバラバラだった要素が結びついて次の経営展開が見えてくるでしょう。その手助けを本書がしてくれそうです。