ビジネスお役立ち知識
交渉がうまくいくかどうかは「理詰め」ではなく「信頼」
効率重視の世の中です。費用効率、時間効率、生産効率……とにかく無駄を省いて結果に反映させることが求められています。しかし、ビジネスが人と人との間で成り立っている以上、効率の追求だけでは解決しないことも多く、もっと言えば効率重視が逆効果になることもあります。たとえば交渉事に効率を持ち込むと、相手の「イエス」を引き出すまでにかえって時間がかかるか、最悪は交渉決裂で終わることがあります。
交渉の目的を“白か黒か”だけで考える人は決着を急ぐ傾向にあるようです。結論は二者択一なのだから、あいまいな話し合いを重ねるより議論を交し合って着地点を目指すほうが合理的、という発想でしょう。若い営業マンによく見られるパターンだと思います。ところが、人や社会にもまれある程度経験を積むと、理屈だけで白黒を決めるやり方は交渉に向いていないと気づくようです。
理詰めの提案は一見もっともらしく思えますが、相手に納得してもらうには至りません。関係の薄い相手から聞く理屈は、反発の材料にはなっても説得の肥やしにはならないからです。これに気づかず理詰めの交渉を進め、“落ちない”落とし所を提案する営業マンはいつまでも堂々巡りの交渉を続けることになります。初めての交渉相手ならなおのこと、こちらがいくら有利な提案をしても本当に約束が守られるのか確信を持ってもらえないうちは、相手から「イエス」を引き出すのは難しいものです。
逆に気心が知れた間柄では、多くを説明しなくてもスムーズに交渉が進むことは経験的にご存知でしょう。交渉は必ずしも正論の理屈が良い結果に結びつくとは限りません。むしろ、信頼関係の大小が大きく影響します。交渉は決着を急がず、お互いを知ることに時間をかける。イソップ物語の「北風と太陽」ですね。