人は、何かを買うために生きているわけではない。よい人と出会い、よい人生を送るために生きている。そこに、消費者があえて口にしない、真の欲求がある。

ビジネスお役立ち知識

人材育成はアナログ発想の方がうまくいく。

大企業のやり方をそのまま中小企業が取り入れて、果たして同じような成果が出るのか――。中小企業の経営者であれば、その答えはご存知でしょう。ただし、これだけは企業規模にかかわらず共通しているだろうと思うのは、トップが企業理念をいかに真剣に伝えているかです。なぜなら、どんな業種であろうと何の職種であろうと、仕事とは結局、対人間の生産活動だからです。

そんな当たり前のことならすでにやっていると言われそうですが、この調査結果をどう思われるでしょう。

野村総合研究所の増田有孝氏(主席コンサルタント)が、2006年に東証一部上場企業の社長、正・非正規社員を対象に行ったアンケートの項目に、「社長や経営幹部は経営理念を実践していると思いますか」がありました。これに対し、「そう思う」「ややそう思う」と回答した社長は9割。しかし正・非正規社員は約6割止まり。感じ方に個人差のある質問なので単純な比較には無理があるとしても、それでも3割の差は、社長と社員との間にある溝として見過ごせない数字です。

会社がどこに向かって走っているのか、企業として何を目指しているのかを社員に真剣に伝え、トップと社員が同じ思いを共有する。これがトップにとっての「企業理念の実践」でしょう。

ワタミの渡邉美樹社長があるインタビューに答え、「経営者が理念や思い、方向性を常に明確に示す。経営者の仕事はそれしかないと言っていいくらい重要なことだ。それも直接話すことが大切」と話しています。ITやデジタル化がいくら進んでも、対人間では常にアナログ発想であれとも取れる内容です。

立派な毛筆の企業理念を社長室に掲げても、それは単なるオブジェです。新年の挨拶やキックオフミーティングなどで我が社の目標を語るのは大事ですが、華やかな場で聞く企業理念もまた、社員にすれば美しいオブジェの鑑賞に思えてしまうかもしれません。けれどもっと身近な場で、噛み砕いた表現で、繰り返しトップの思いを聞き続ければ、社員は少なくとも「鑑賞」ではなく自分の問題として企業理念を捉えるようになるのではと思います。

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