ビジネスお役立ち知識
売れる商品は、具体的な問いから生まれる!
100円ショップでもビニール傘が買える時代に1本3万円の傘が売れ続けているそうです。“濡れない傘”として話題を呼んでいる「ヌレンザ」は福井商工会議所が主宰する「苦情クレーム博覧会」から商品化されました。ユニクロや焼肉の牛角がクレームを募集して商品開発に役立てたことはご存知でしょう。「ヌレンザ」の開発も、あるクレームがきっかけになりました。
■「だったら水をはじく布を一から作ればいい」
「福井洋傘」(福井県福井市)の2代目・橋本肇さんのところには以前から、「濡れた傘は扱いが面倒だ」「傘についた水滴で服が濡れて困るんです」といった意見が寄せられていたそうです。それまでも“撥水(はっすい)”をうたった傘はあったものの、多くは布の表面に撥水加工を施しただけなのでそのうち加工がはげてしまうのです。「苦情クレーム博覧会」にも同様の苦情が数多く寄せられていることを知った橋本さんは、「だったら水をはじく布を一から作ればいい」と思いつき、コーティング不要の生地の開発に踏み切りました。地元の生地メーカーと共同で布地の織り方を研究し、出来上がったのは水滴をはじき飛ばす超高密度ポリエステル素材。パッとひと振りで水滴が振り払われて乾いた状態になるそうです。名付けて「ヌレンザ」。常識を覆すような高機能傘はこうして誕生しました。
「ヌレンザ」以外にもこだわりの洋傘を作り続けている橋本さんの商品開発の原点は、幼い頃に抱いた傘に対する不満や願望だそうです。水をはじく布を一から作ろうとした橋本さんの発想を周囲は無謀だと呆れたそうですが、ご自身もむかしから「濡れた傘は面倒くさい」と感じていたのでしょう。普通なら「そんな傘できるわけない」と考えるところを、「だったらどうする?」と問いを立てたことで一つのヒット商品が生まれました。漠然としたアイデアも問いを立てることの繰り返しで形になっていくのだと思います。